- 論理的な思考を元に業務改善したい
- MECEをどう扱うとよいのか
物事を論理的思考で捉えることができるのとそうでないのとでは、雲泥の差があります。こと仕事においては複雑な課題に直面することもしばしばあります。
そんなときに正しく効率の良い方法で、物事を分類できれば、最短で最適な解決策を導き出せるかも知れません。
「漏れなくダブりなく」の意味をもつ「MECE(ミーシー)」というフレームワークが物事を正しく効率良い方法で分類するのに役立ちます。
本記事では、MECEの基本から進め方まで完全解説していきます。
この記事を読むことで、MECEについてどのように扱えばよいのか、「MECEに考えること」が分かるようになります。
MECEとは「漏れなく・ダブりなく」という意味
MECEは、以下の4つの単語の頭文字から構成される、ロジカルシンキングのフレームワークです。
MECEを構成する4つの言葉
- Mutually:互いに、相互に
- Exclusive:重複せず、被らず
- Collectively:まとめて、全体に
- Exhaustive:漏れなく
MECEは「漏れなく・ダブりなく」という意味を持ちますが、それがなぜロジカルシンキングのフレームワークと言われているのでしょうか。
理由は2つあります。
- 漏れがあると問題解決に落ち度が出る
- ダブリがあると同じ検証を繰り返すため非効率的
ロジカルシンキングとは、物事を要素ごとに分類し、論理立てて整理していく思考法のことですが、分類方法に漏れやダブりがあうと、正しい問題解決の道は導けません。
矛盾が生じないように筋道を立てて考えることで複雑な物事もわかりやすくなり、理解・推論しやすくなるため、MECEの「漏れなく・ダブりなく」がロジカルシンキングにぴったりと当てはまるのです。
パターン①:漏れあり・ダブリなし
ある飲食店のターゲット層の分類に関して考えてみましょう。
例えば、10代~30代に分類したとします。この場合、重複はしませんが、10代未満や40代以上が要素として入らないため漏れがあります。
パターン②:漏れなし・ダブリあり
次は、ターゲットを大人・子ども・男性・女性で分類してみます。この場合は、大人や子どもの中には女性も男性もいるため、漏れはありませんが重複するダブりがあります。
パターン③:漏れあり・ダブリあり
漏れもダブりもある場合はどうでしょう。例えば、学生ターゲットのカテゴリーを挙げる時に、小学生、中学生、高校生、予備校生、受験生といった分類をします。
この場合は、大学生は含まれていないため漏れがあり、予備校生には、受験生や中学生、高校生も含まれることもあるためダブりがあります。
MECEで分析する方法
MECEで分析する方法は以下の3ステップになります。
MECEで分析する3ステップ
- 大きな目的を設定する
- 要素を洗い出す
- 洗い出した要素を細分化する
何をゴールに分析していくのか大きな目的を設定したら、重複するものがないようにして、3ステップに沿って分析していくと問題を細分化しやすくなります。
MECEに考えるための2つのアプローチ方法
MECEで論理的思考をする際の具体的なアプローチ方法が2つあります。「トップダウンアプローチ」「ボトムダウンアプローチ」です。
次の項でそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは、全体から大きな枠を決定し、要素をその枠の中に当てはめる手法です。
分類の目的や全体像が明確な場合に有効です。俯瞰して物事を捉えることができるため、演繹的なアプローチとも言われています。
トップダウンアプローチのメリット
トップダウンアプローチのメリットは、俯瞰的に物事を考えることができ、ゴールを見据えた分類がしやすいという点です。全体像を俯瞰して捉えるので、ゴールからの逆算ができます。
トップダウンアプローチのデメリット
トップダウンアプローチのデメリットは、全体を把握していない場合、分類の段階で漏れが生じる可能性があるということです。また、全くゼロから始めることができないので、ゴールとなる目的を定めるなど準備が必要です。
ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチは、ブレインストーミングのように思いつく要素を並べてみて、そこからグルーピングし、分類の仕方を決める方法です。
「トップダウンアプローチ」が演繹的なアプローチであるのに対し、こちらは帰納的アプローチといえます。
ボトムアップアプローチは、全体像が不明瞭な場合やどのような分類をすればよいか事前に見当がつかないような場合に有効なアプローチ法です。
ボトムアップアプローチのメリット
ボトムアップアプローチのメリットは、事前にどのような分類をしていいのか見当がつかない場合など、まったく未知の領域でも思考を開始できる点です。MECEで考える際に、トップダウンアプローチから行うのが基本ですが、全体像が不明瞭の場合は、先にボトムアップアプローチで考えるのも有効な方法でしょう。
ボトムアップアプローチのデメリット
ボトムアップアプローチのデメリットは、要素の洗い出しが甘いと分類に漏れが生じやすくなる点です。分類の仕方が間違っているとダブりも生じてしまう可能性もあるので、要素の洗い出しをする際に漏れがないかをチェックしながらするとよいでしょう。
MECEに分解するポイント
MECEに分解するポイントは、以下の4つです。
ポイント
- 要素分解
- 因数分解
- 対照概念
- 時系列・ステップ分け
次の項でそれぞれ詳しく解説します。
要素分解
要素分解とは、全体像を把握し、それらを構成している要素をピックアップする方法のことです。足し算型、積み上げ型ともいわれており、全体としてどのように整理できるのかを考えて、それを一定の方針のもとで分類していきます。
要素分解により、それぞれの要素に注目して分析したり、解決策を検討したりできるようになります。
因数分解
因数分解とは、分析したい対象を計算式で表し、要素に分解する方法のことです。掛け算型ともいわれ、例えば、売上を「顧客数×顧客単価」などの計算式にして分解します。
要素ごとに相互関係を加味しながら、様々な切り口で分解できるのが特徴です。
対照概念
対照概念とは、対照的な概念を挙げて、分解する方法のことです。
例えば、「主観と客観」「質と量」「メリットとデメリット」「法人と個人」などのように反対になる概念を活用し分析していきます。
それぞれの因果関係による対立関係はどのようなものかというような点から考えていきます。人に説明する際、この概念を意識することでより伝わりやすくなるでしょう。
時系列・ステップ分け
時系列・ステップ分けは、時系列または段階で分解していく方法のことです。
例えば、プロジェクトの立ち上げ時に、「準備→実行→評価→改善」など、段階的に分解しすることを指します。
MECEに考える際の注意点
MECEに考える際の注意点は主に以下の3点です。
注意点
- ダブりよりも漏れに注意する
- 目的を忘れない
- 優先順位をつける
ダブりよりも漏れに注意する
MECEはそもそも、「抜け漏れ」をなくすための考え方です。
ダブりがないことも重要ですが、漏れがないかどうかに重点をおいていきましょう。
目的を忘れない
分類することを意識するあまり、MECEの目的を忘れてしまう場合も少なくありません。
MECEはあくまでも、分類するための手段ですので、何のために分類し分析するのか、目的を常に念頭において取り組みましょう。
優先順位をつける
要素ごとに優先順位をつけて切り口を絞り込むことも重要です。物事を分類する時には、重要性の低い要素も出てきます。
また、主観や思い込みに左右されるケースもあるため、優先順位を決めて取り組みましょう。
MECEに考えるためのフレームワーク
MECEに考えるために役立つフレームワークを3つご紹介します。
- SWOT分析
- 7S分析
- PDCA
次の項でそれぞれ詳しく解説していきます。
SWOT分析
SWOT分析とは、以下の4つの視点から事業の成功を導き出すフレームワークのことです。
SWOT(スウォット)4つの視点
- Strengths(強み)
- Weaknesses(弱み)
- Opportunities(機会)
- Threats(脅威)
各要素を内部環境と外部環境、マイナス要因とプラス要因に分類して、分析していきます。
7S分析
7S分析とは、組織の戦略を分析するもので、企業戦略における7つの要素の相互関係を示します。
7つの要素は、「ソフトの4S」と「ハードの3S」に分けられます。
ソフトの4S
- 能力(Skills)
- 人材(Staff)
- 価値観(Shared Value)
- 経営スタイル(Style)
ハードの3S
- 仕組み(Systems)
- 組織構造(Structure)
- 戦略(Strategy)
7S分析は、要素分解型(足し算型、積み上げ型)のフレームワークです。
PDCA
PDCAとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)のサイクルを繰り返すことで活動レベルを高めるために有効な方法で、MECEの分類に当てはめると「時系列、ステップ分け型」のフレームワークになります。
また、「業務改善できるフレームワークとは?効率化にも役立つ9選を徹底紹介!」では、このほかMECEに考えるためのフレームワークをご紹介しています。合わせて参考になさってください。
まとめ:「MECEに考えること」が複雑な課題に取り組む助けになる
今回は、MECEについて基本から進め方、「MECEに考える」ためのおすすめのフレームワークまでご紹介していきました。「MECEに考えること」ができるということは、論理的思考が身につくということです。
MECEはロジカルシンキングの基礎概念ともいわれていますから、身につけておいて損はありません。それは、日頃の業務効率アップであったり、複雑な課題を乗り越えるための助けともなってくれます。
ぜひMECEを活用し、今後の仕事の成果につなげていってください。