個人事業主になると避けて通れないのが「経理業務」です。最近個人事業主になった方や、これから個人事業主になる方の中には、経理業務を何から始めたらいいかわからない経理初心者の方が多いでしょう。そこで本記事では、個人事業主がやるべき経理業務を徹底解説します。
この記事はこんな方にオススメ
- 個人事業主の経理を何から始めたらいいかわからない
- 個人事業主の経理業務の流れを知りたい
個人事業主が経理業務をする理由
個人事業主が経理業務をする理由は次の4つです。
- 確定申告のため
- 経営状況を把握するため
- 借り入れのため
- 取引先と円滑な取引をするため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
確定申告のため
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得に応じた所得税額を計算し、精算する手続きのことです。
個人事業主は、確定申告の情報をもとに、次の税金を納めます。
個人事業主が納める税金の種類
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税(前々年の売上が1,000万円以上の場合)
正確な確定申告をして納税の義務を果たすためにも、経理業務は必須です。
経営状況を把握するため
事業を営んでいくために、経営状況の把握は必要不可欠です。
経理業務をすれば、毎月の売上、経費、利益が明確になり、経営状況を把握できます。
経営状況を把握できれば、事業でトラブルが発生したときも、業務改善や軌道修正に役立てられるでしょう。
借り入れのため
事業を行うための資金繰りとして、借り入れが必要な場合があります。金融機関からの融資を受けるときは、経営状況がわかる書類の提出を求められるため、経理業務を行っていないと書類が作成できません。
したがって、借り入れのためにも経理業務が必要になります。
取引先と円滑な取引をするため
経理業務の中には、取引先への請求書や納品書の発行、入金確認、振込業務などもあります。これらの経理業務が滞ると、取引に支障が出る可能性もあるでしょう。
取引先と円滑な取引をするためには、経理業務は必須です。
個人事業主の経理業務の流れ
個人事業主の経理業務は、大きく4つに分けられます。
- 開業時の業務
- 日々の業務
- 月一の業務
- 年一の業務
それぞれ詳しく見ていきましょう。
開業時の業務
税務署に提出する書類
開業時には、次の書類を管轄の税務署・都道府県に提出しなければなりません。
個人事業の開業・廃業等届出書
個人事業を開業したことを税務署に届け出る書類です。
事業を開始してから1カ月以内に提出する必要があります。
所得税の青色申告承認申請書
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類の申告方法があります。
青色申告をする場合は、青色申告承認申請書の届け出が必要です。開業届と一緒に提出しましょう。
青色事業専従者給与に関する届出書
青色申告を選んだ個人事業主が、青色事業専従者となる配偶者や親族に対して支払った給与を経費として計上する場合に届け出る書類です。
青色事業専従者の条件
- 青色申告事業者と生計を一にする配偶者、その他親族であること
- その年の12月31日時点で年齢が15歳以上であること
- その年を通じて6カ月を超える期間、青色申告事業者が営む事業に従事していること
配偶者や親族に対して支払った給与は、そのままだと経費として計上できません。所得税額を大きく左右するため、青色事業専従者の配偶者や親族がいる場合は、忘れずに提出しましょう。
都道府県に提出する書類
開業時は、次の書類を都道府県に提出します。
事業開始等申告書
都道府県税事務所に、個人事業を開業したことを申告する書類です。
提出期限は都道府県によって異なるため、事業を営む都道府県の提出期限をあらかじめ確認しておきましょう。
この書類の提出をしていないことで罰則を受けることはありません。
日々の業務
個人事業主が日々行う主な経理業務は、次のとおりです。
- 記帳
- 売上金入金
- 経費精算
- 領収書整理
- 請求書・納品書管理
売上や経費が発生したら、その都度お金の動きを帳簿に記録します。面倒でも日々行うことで、正確な経費管理ができます。
月一の業務
個人事業主が月一で行う業務は、次のとおりです。
- 請求書・領収書の発行
- 売上代金の回収
- 仕入代金の支払い
- 試算表の作成
- 現金・銀行口座の残高と帳簿残高の照合
- 給与計算・支払い(従業員を雇用している場合)
- 源泉所得税納付(従業員を雇用している場合)
また、従業員を雇用している場合は、給与計算・支払い、源泉所得税の納付も経理業務に加わります。
年一の業務
個人事業主が年一で行う業務は、大きく分けて以下の2つです。
- 確定申告
- 年末調整
それぞれ詳しく見ていきましょう。
確定申告
確定申告の手順は以下のとおりです。
1.青色申告決算書(青色申告)または収支内訳書(白色申告)の作成
2.確定申告書の作成
3.税務署へ提出・納税
スムーズに確定申告を進めるためにも、確定申告に関わる帳簿付けや書類の準備などは、確定申告期間から逆算して行うのがポイントです。
在庫を持つ事業を行っている場合
商品や製品、材料などの在庫を持つ事業を行っている場合は、確定申告をする前に、期末棚卸・決算仕訳といった業務が必要です。
期末棚卸とは、商品や製品、材料などの期末時点での在庫数を数える業務です。商品の販売や製造といった商売を営む個人事業主が必要になります。
決算仕訳では、棚卸で把握した在庫を経費から資産に振り替えたり、紛失した在庫や、商品・製品価値が落ちてしまった在庫を損失として落としたりします。
そのほか、固定資産を持っている場合は、減価償却の仕訳も行います。
年末調整
従業員を雇用している場合、年一で年末調整が必要になります。
年末調整とは、従業員の1年間の給料をもとに、所得税の金額を確定させる業務です。
年末調整で確定した所得税額と、毎月給料から天引きしている源泉所得税に過不足があった場合、還付したり、徴収したりする必要があります。
このほか、年末調整に関わる業務として、給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表の作成や、給与支払い報告書の作成が必要です。
1年間で従業員に支払った給料の合計金額や人数を報告する書類です。このほか、弁護士や税理士へ支払った報酬、不動産の使用料を記載します。提出期限は、翌年1月31日です。
給与支払い報告書とは
従業員が住んでいる自治体に提出する書類です。自治体は、給与支払い報告書に記載された1年間の給料をもとに、従業員の住民税を決定します。提出期限は、翌年1月31日です。
個人事業主の経理業務方法
たくさんの作業が必要な個人事業主の経理業務ですが、経理業務の方法は大きく分けて次の3つです。
- エクセルを利用する方法
- 会計ソフトを利用する方法
- 経理代行サービスを利用する方法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
エクセルを利用する方法
エクセルソフトが入っているパソコンなら、導入コストをかけずにすぐに経理業務が可能です。データの互換性が高いため、帳簿データの共有やデータ移行がしやすくなります。
ただし、何か取引が発生するたびに、すべての帳簿にいちいち入力しなければいけないため、想像以上に手間がかかります。
会計ソフトを利用する方法
会計ソフトを利用すると、仕訳を入力するだけでさまざまな帳簿に自動で連携されるため、効率よく経理業務が行えます。
専門知識がなくても行えるため、経理業務に十分な時間が取れる方におすすめです。
こちらも合わせてご覧ください。
経理代行サービスを利用する方法
経理代行サービスを利用すると、プロに経理業務を丸投げすることができます。経理に割いていた時間を本来注力したい業務に使えるので、経理業務に時間を費やせない方や、起業を考えている個人事業主の方におすすめです。
まとめ
個人事業主の経理業務は、日々行う業務、月一で行う業務、年一で行う業務と、さまざまな作業をしなければいけません。
しかし、確定申告で正確な納税をするため、取引を円滑に進めるため、そして経営状況を把握するために必ず必要です。
最近個人事業主になった方や、これから個人事業主になる予定の方は、1年間の経理業務の流れをしっかり把握し、自分に合った方法で経理業務を行いましょう。