個人事業主がはじめて人を雇うときに必要な手続きとメリット、注意点を解説

 (更新日2023.07.28)
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  • 「事業が大きくなってきたので、従業員を雇いたい」
  • 「しかし、必要な手続きと流れがわからない」

一人で事業を立ち上げ、売上も順調に伸びてきた個人事業主であれば、さらに事業を大きくするために、人員拡充がパッと頭に浮かぶでしょう。

ただ、はじめて人を雇うとなると、必要な手続きや届け出など分からないことが多いかもしれません。

そこでこの記事では、人を雇うために必要な手続きを解説するとともに、メリットと注意点についても解説します。

この記事を読むことで、個人事業主が人を雇う際の具体的な進め方についてイメージしやすくなります。

これから雇用を考えている個人事業主の方は、ぜひ最後までご覧ください。

人を雇うときの流れと必要な手続き

アルバイトから正規雇用、業務委託まで、自分以外の人に仕事を頼むときの大まかな流れについて紹介します。

人を雇うときの大まかな流れ

  1. 雇用形態の決定・・・正社員、契約社員、アルバイト・パート、業務委託
  2. 採用活動・・・ハローワーク、オンラインの求人媒体、求人サイト作成ツール など
  3. 雇用形態に応じた必要書類の準備・・・契約関係、保険(雇用保険、社会保険)、税金関係
  4. 所轄の場所へ提出・・・年金事務所・社会保険組合、税務署 など

なお、業務委託契約で業務をアウトソーシングする場合は、保険手続き等は不要です。

社員やアルバイトなど、雇用契約で人を雇うときには、具体的に以下の流れで手続きを行います。

雇用契約の場合の手続きの流れ

  1. 労働条件の通知
  2. 労働保険・社会保険の手続き
  3. 税務署への届け出
  4. 源泉徴収の準備

それぞれの手続きについて、以下で解説します。

労働条件の通知について

個人事業主が従業員を雇用する際には、法人と同じく労働条件を通知する必要があります。

たとえば、

  • 雇用形態
  • 契約期間
  • 労働時間
  • 業務内容
  • 休日休暇
  • 給与
  • 給与の支払い方法や期日
  • 勤務地

など、雇用される側が安心できるような労働条件を整えておくようにしましょう。

また、以下の2点を情報管理の観点から取り交わしておくことをおすすめします

  • 就業規則を定めて誓約書にサインしてもらうこと
  • NDA(秘密保持契約)を交わすこと

特に、NDA(秘密保持契約) は個人情報の取り扱いや企業機密保持のためにも忘れずに取り交わしておきましょう。

労働保険・社会保険の手続きについて

一人でも従業員を雇う場合、労働保険(雇用保険、労災保険)、雇用人数によって、任意で社会保険(健康保険、厚生年金)の手続きが必要です。

保険ごとの加入が必要になる条件は以下の表をご参照ください。

雇用保険1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ、
31日以上引き続いて雇用される見込みのある従業員は加入
労災保険1人でも雇用契約を結んだら加入する
社会保険
(健康保険・厚生年金)
個人事業主の常勤社員が5人未満なら任意で加入が可能、
それ以上は強制で加入

加入しなければならないものを忘れている状態で万が一、労働災害が起きた場合には、雇用者側に大きな費用負担が発生するため、気をつけましょう。

税務署への届け出について

初めて従業員を雇う際には、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」の届出をします。

個人事業主の新規開業と同時の場合は、開業届に記載しておくとよいでしょう。

源泉徴収の準備について

源泉徴収の準備をするため、従業員を雇ったら「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を毎年記入してもらい、保管しておきます。

従業員を雇うことになれば、給与から所得税を天引きし、従業員に代わって所得税を税務署に納める必要があります。所得税を支払うためには、給与支払事務所等の開設届出書を「雇用してから1か月以内」に提出しなくてはいけません。

ただし、本来は毎月納付しなければなりませんが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、年2回で済みます。事務処理を減らすためにも出しておくとよいでしょう。

直接雇用をする場合

個人事業主が正社員やアルバイトを直接雇用する場合、どのような違いがあるのでしょうか。

正社員・契約社員

中には、「個人事業主が正社員を雇うことができるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、個人事業主であっても正社員を雇うことは可能です。

また、契約社員という業務形態もありますが、法律的には「雇用期間の定めがあるか」の違いだけになります。

正社員の場合も契約社員の場合も雇用保険、労災保険手続き等が手続きが必要になります。

アルバイト・パート

法律的には、アルバイトとパートとの違いはなく、どちらもパートタイム労働者に区分されます。

パートタイム労働者は、社員よりも週当たりの労働時間が短い人を指します。

パートタイム労働者は、学生が学業の合間に働いたり、主婦や主夫が週に数回だけ働いたり、というケースが多いようです。

一般的には、「正社員の補佐的な役割」といったイメージがあるでしょう。そのため、アルバイト・パートを雇う方が気軽な印象があります。

しかし、アルバイト・パートとして雇用されても、実際は長時間働き、業務内容やスキルについても、正社員の場合と求めることがあまり変わらない場合も多くあります。

雇用する側とアルバイト・パートで働く側の利害が一致していれば問題ないかもしれませんが、そうでなければ定着しにくいケースもあります。

業務委託の場合

業務委託は、業務の一部を委託する契約のことをいいます。法律上、社外の人間として業務を遂行するという業務形態になるため、労働基準法などの適用外となります。

そのため、雇用保険や労災保険手続き等が手続きは不要です。

業務契約書を結び、契約内容に基づいて働く方法で、労働時間ではなく仕事の成果に応じて報酬を支払うことになります。

業務委託契約書は、民法第522条で、口頭でも契約は締結されるとしているため、業務委託契約書契約書の作成は必須ではありません。

しかし、何の書面を取り交わしてない契約では、何かトラブルがあった際に「言った・言わない」で揉める可能性が高いです。

そうしたリスクを避けるために、業務委託契約書の用意は必要です。

また、契約書と合わせて、NDA(秘密保持契約)を交わすようにしましょう。

求人方法について

個人事業主が採用活動するときの求人方法には、主に以下の3つがあります。

求人募集ができる媒体

  • ハローワーク
  • オンラインの求人媒体
  • 採用サイト作成ツールを活用

それぞれ以下でご紹介します。

ハローワークで求人募集する

ハローワークは、無料で利用できる求人媒体で地域に根ざした求人を掲載しています。

また、ハローワークでは職員が求人に関する相談にも乗ってくれるため、どのような求人票に募集が集まるかなど聞いてみるのもいいでしょう。

オンラインの求人媒体で募集する

最近では、求職活動する人のほとんどがオンラインの求人媒体で就職活動をしています。

求人広告の出稿が無料の媒体も増えていますので、まずは無料の媒体から始めて、募集状況によっては、有料の求人媒体にも掲載を検討するとよいでしょう。

採用サイト作成ツールを活用する

ご自身で採用サイトを作成するという方法もあります。

一からWebサイトを立ち上げるとなると時間も費用もかかりますので、「toroo(トルー)」や「採用係長」、「ミートソース」などの採用サイト作成ツールを活用するのがおすすめです。

個人事業主が人を雇うメリット

個人事業主が人を雇うメリットは、以下の2つです。

メリット

  • 生産性が上がる
  • 事業拡大のための人員を確保できる

それぞれのメリットについて以下で解説します。

事業拡大のための人員を確保できる

個人事業主の場合、一人でできることにはどうしても限界があります。

そのため、事業を拡大させたい場合は、人員を増やすことが必要になってきます。

人員の確保ができれば、一人では抱えられなかった大きな案件を受注したり、受注件数を増やすことができるため、結果的に売上アップや事業拡大にもつながります。

業務効率化できる

人を雇うことでリソースが増えれば、その分だけ仕事の生産性が上がります。

さらに、業務を分散させることにより、業務効率化も可能です。

また、傷病や急用でどうしても仕事を休まなければならないときのフォローも内容によっては任せることができます。

個人事業主がはじめて人を雇うときの注意点

個人事業主が人を雇うときの注意点は、以下の2つです。

注意点

  • 採用・雇用に関する手続き等で業務負担が増える
  • 急に辞めてしまうリスクもある

それぞれの注意点について、解説します。

採用・雇用に関する手続き等で業務負担が増える

基本的に、最初は採用・雇用に関する手続きも全て個人事業主自身で行うことになりますので、対応にかかる時間や事務処理などの業務負担が増えます。

たとえば、求人広告の掲載、履歴書の確認や面接など、一人でやるべきことがたくさんあります。さらに採用が決まっても、届出関係や契約書の作成といった手続きを行なう必要があります。

そのため、本業の方にかけるべき時間が減ってしまうので、より時間管理が重要になってきます。

また、業務委託であれば、専門の業務に関するプロとして業務の一部を任せることができますが、雇用契約の場合は、教育などに自分のリソースを割く必要も出てきます。業務について指導する余裕が自分にあるかどうかも注意しておきましょう。

急に辞めてしまうリスクもある

時間や費用をかけて採用した人材がすぐに辞めてしまうこともあるかもしれません。

そうなると、事務負担だけが増えてしまいます。

新たに採用するとなると再び採用費用がかかってしまうため、採用時には、できるだけ長く働いてくれそうな人を見抜く目も必要となるでしょう。

ただ、業務委託の場合で外注先によっては、チーム編成を組み業務に対応してくれるところもあります。その場合であれば、人員不足にも対応してくれたりしますので、自身が任せたい業務に合うアウトソーシングの会社に依頼するという選択肢もあります。

まとめ

今回では、個人事業主が人を雇うために必要な手続きやメリット、注意点について解説しました。

ご自身の事業内容によって、雇用形態も変わってくるかと思います。

「任せたい業務は何か」

「どんなスキルを持つ人材に来てほしいか」

「必要な手続き、準備する書類は何か」

などを明確にした上で雇用の準備を進めてみてくださいね。

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